小学校 [松日和]
上階は若い親子4人が住んでいて,お向かいさん,隣の大家さんとともに近所づきあいが結構厚い。
東京ではちょっとめずらしい光景かもしれない。
上階の奥さんは元小学校・幼稚園の先生だ。
お向かいさんも2人のお子さんがいて,私は私で高校教師なので,自然と子どもの教育の話になる。ある時,お向かいの奥さんが「今の小学校って何がそう忙しいの?」と尋ねた。お向かいさんちは小学生のお子さんが2人。2人の子どもが云うには,先生は忙しくて全然遊んでくれない・・・というか,先生は子どもと遊ばないもの,くらいの感覚なのだそうだ。2人の奥さんと私は同世代。小学校といえば,どんなベテランの先生だって昼休みになれば校庭で一緒になって遊んでくれたというのが原風景な私たちにとって,今の小学生のそれはかなりかけ離れたものらしかった。
確かに,高校教員に比べたら中学校・小学校・幼稚園と学年が下るにつれて指導は難しいだろうし,忙しさも尋常ではないとは想像はつく。でも,小学校の先生の醍醐味なんじゃないのか?とも思うのだが。
そこで元小学校教師だった上階の奥さんが神妙に話してくださった。
高校教員同様,いわゆる書類モノがここ10数年で5倍くらい増えているそうだ。また,問題行動や多様な児童,保護者,地域との対応で到底,クラスの子どもと遊んでいる暇はなくなっているという。
では,子どもとどんなふうに信頼関係を築くのか?
多くの小学校教員は,ベテランであっても子どもや保護者との距離が,アホな書類や役人仕事のために離れていくことには危機感がある。そこでなんとか細い糸をたぐるようにしているのは
「毎日クラス通信を出す。PCではなく,イラストや手書きのもの」
「教材を可愛らしくアレンジして,他のクラスと差別化=特化させる」
「通信簿以外にメダルや表彰状を作って全員何かしら評価されるように工夫する」
・・・・むむむ,これは次の夜間部でも使えそうな予感( ..)φメモメモ
上階の奥さんは幼稚園での経験がフルに生かされたと仰っていた。
多忙のあまりハード面がなかなか機能しない分,いわばこうしたソフト面でそれを補填するのだとい
う。こういう細やかさは中学や高校には・・・私にはないなぁ・・・(^_^;)反省,反省・・・
でも,夏休みに行った小学校教員対象の研修でも似たようなことを言ってた気がする。
下の学年に行くほど何もかもがとても丁寧だ。イマドキは精神年齢からして幼くなっているから,こういうキメの細かい指導はニーズがあるんだろうなぁ・・・なんて感心していたら,
「高校でしてくれたらありがたいとは思うけど,ちょっとねぇ・・・」とも云われた。
いや,実際に通信モノは生徒にも保護者にもウケはいい。プリントの類もちょっとイラストやカラーも
のにすると生徒たちの食いつき度が違うんですよ~と高らかに話すと,
「やっぱり昔と違うわねぇ・・・自立とか進路とか考えると心配」とは元小学校教師の弁。
長女が4月からいわゆる中高一貫校に通うことになったお向かいの奥さん曰く,
「確かになんだか気持ち悪いくらいバカ丁寧っていうか・・・こんなことまでしてくれるの?って感じ
だった」と。
世間と現場の間のズレというか,温度差というか・・・
世間のニーズと実際の子どもたちの現状にも格差があるし,
互いに妙な違和感を持っていることは確かだ。
高校なんて,生徒の顔と名前覚えるだけで十分だ,なんて思っている私も私でホスピタリティなさすぎ,と感じている今日この頃である。この数年で特に若い先生方から学ぶことが多かったので,それを春から生かしてみようかと思う。
高校教育のテーマが「自立・自律(進路実現)」であることを忘れずに。
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